道具と人 第二回「バフィングマシン」

道具と人

この連載では、ランドセルづくりに欠かせない“道具”とその道具と向き合う“人”をご紹介いたします。 今回登場する道具:バフィングマシン 人:森岡祥人さん

磨くことから、全神経を集中させる

鞄工房山本のランドセルの顔といってもよい「コバ塗り」。革の裁断面(コバ)にニスを塗って仕上げる製法で主に高級紳士鞄に多く用いられます。鞄工房山本では、創業当初より、このコバ塗りをランドセルに取り入れてきました。このコバ塗りの前には、コバを滑らかにするために「コバ磨き」を行います。今回は、コバ磨きで使用する機械「バフィングマシン」をご紹介します。 現在、コバ磨きとコバ塗りを主に担当している森岡さん。いつも明るい森岡さんは工房のムードメーカー的な存在です。 鞄工房山本 道具と人 第二回「バフィングマシン」 工程の流れについて、森岡さんにお伺いしました。 「コバ塗りの前に、革の断面のザラつきを滑らかにするコバ磨きを行います。まず、ダイヤモンドディスクを取り付けたバフィングマシンで“面取り”をし、コバの角を落として丸みを出します。その後、ダイヤモンドディスクを木目ディスクに変えて“バフィング”。細かい毛羽立ちを飛ばして革の繊維を締めます。」 バフィングマシン バフィングマシン 「次に、ニスが染みこみ過ぎないように特殊な液を塗り込みながら磨き、ようやくニス塗りに入ります。」 鞄工房山本 道具と人 第二回「バフィングマシン」 「ニスを塗った後、再度磨き、ニスを塗ります。ニスを塗る度に乾かし、磨き、①下塗、②本塗り、③仕上げ塗りと3回ニスを塗り重ね、ようやくコバ塗りの工程は終了します。」 コバ塗りの仕上がりは、その前の「コバ磨き」、つまり「面取り」と「バフィング」の仕上がりの出来によると森岡さんは言います。 「回転するディスクに革の裁断面を当てて面取り・バフィングをするのですが、回転に逆らって革を動かすため抵抗が発生し、時には引っかかったりすることもあります。失敗すると、コバが平らにならず、その後のニスもきれいに塗れません。だから、コバ磨きの工程が非常に重要なのです。」 そんなバフィングマシンはイタリア製。取り付けるディスクは革のパーツによって異なるそうです。 鞄工房山本 道具と人 第二回「バフィングマシン」 「例えばダイヤモンドディスクの場合、かぶせとベロ、コードバンと牛革でも異なるディスクを使います。革の硬さや厚みに合わせて使うディスクが違いますので、設定するときは間違えないように気を付けています。」 鞄工房山本 道具と人 第二回「バフィングマシン」 そんな森岡さんも担当し始めた頃は、コバ磨きよりコバ塗りの方に意識が集中していたそう。 「『コバ塗りを美しく仕上げる=コバ磨きを美しく仕上げる』、と分かり始めたのは、担当して半年くらい経ってからです。それまでは、いかにきれいにニスを塗るかということばかり考えていました。今は、コバ磨きの段階から全神経を集中させてきれいに仕上げるよう心がけています」 コバ磨きが終わると、次はいよいよコバ塗りに入ります。 次回は、実際にニスを塗る際に使う「ニス機」をご紹介します。

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