夢こうろ染(6) 〜京の水は日本一~

夢こうろ染

「京都の水は日本一」と掲げられているジャズの流れる奥田祐斎先生のギャラリー。 京都の水がなぜ良いのか。その理由は聞いてみると、日本の食文化を思い出してみると良い、と言った。 豆腐はどこでも作っても同じ製法である。例えば、どんなに良い大豆を使っていても、京都で作られる豆腐にはかなわないであろう。その理由は水によるところが大きいという。 豆腐づくりには大量の水が必要だ。大豆を浸して水を含ませる。砕いた大豆を煮る。できた豆乳ににがりを入れ、固める事でできるのが豆腐。その90%が水分だという事からも、水の重要性がわかる。そして、軟水はミネラル分が低いために癖が無いので素材の味が生きるのだ。 「染め物は水に始まって水に終わる。料理と通じるものがあるんです。」 京都の水で染めると、にじみの出方や発色が違うと奥田先生は教えてくれた。京都の水はミネラル分が低いために邪魔をしない、という事なのだ。そんな環境は世界を探しても見つからない。 さて、料理と水の関係についてだが、中国等では、水が良くないために揚げるなどの水を多く用いない調理方法が多い。しかし、日本では水を含めた素材を活かした料理が発達している、と考察を奥田先生は語った。 ヨーロッパでも、ワインや牛乳、煮汁等で濃い味を付ける必要があったとも。つまり、水で味が左右される調理方法が見られるのは日本だけなのだ。 28Nov2014_021 もし、海外で日本茶を入れる機会があれば、色や味が違う事に注目してみると、この水の大切さがより理解できるだろう。 では、布に当てはめてみるとどういうことなのだろうか。 中国では織物や刺繍が、ヨーロッパは織物とレースが発達した。日本では同じ織物であっても、最初の糸の染めを大事にし、その味を活かした織りへと発達していった。また、手染めの手法が用いられ、独特の風合いがつくり出されていった。藍や茜といった日本にしかない色も水の良さによってなし得た発色である。 また、染め物には気候も密接に関係する。質は良くなくとも少量の水で済む型染めは、世界の他の地域でも行なえる。料理と同じである。 そして、染めたものが早く乾燥する乾燥した気候であれば、多色刷りも可能となる。にじむ事が無く、色を重ねていく事ができる。という訳で、型染めは日本よりも世界が発達している。 と、奥田先生が教えてくれた事である。 京都の水は日本一ではなく、世界一なのである。それは、発色の良さや素材本来の風合いを活かすことにおいて、世界一の環境なのだ。 革の風合いを生かす事が、鞄工房山本のランドセルが大切にしているものである。見た目、感触など、感覚を刺激すること、そして、繊細で質にこだわる事。 同じ考え方の元で夢こうろ染のランドセルが作られた訳で、それを持つ子ども、そして親たちの感性に少なからず良い影響を与えていくであろう。 「日本でしかできない事を続けて行けば、世界一になれる」、と奥田先生は信じる。

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