
小学生の通学に欠かせないランドセル。ですが、近年「重すぎるランドセルが子どもの心身に悪影響を及ぼしている」という声が増えています。
その代表的な例が「ランドセル症候群」。成長途中の身体に過度な負担がかかることで、肩こりや腰痛、さらには通学や学習への意欲低下につながることも。
本記事では、ランドセル症候群の原因・症状・対策をわかりやすく解説します。お子さまが健康に毎日を過ごすために、これからランドセルを購入される方も、すでにお子様が利用中の方も参考にしていただければと思います。
ランドセル症候群とは
近年、注目が高まっている「ランドセル症候群」。
鞄工房山本の店舗でも、ニュース情報でこの話題を知って「少しでも軽いランドセルを」と希望されるお客様が年々増えています。
ここでは、「ランドセル症候群」の定義やメカニズムについて詳しく解説します。
ランドセル症候群の定義と背景
「ランドセル症候群」とは、成長途中の小学生が重すぎるランドセル(カバン)や荷物を毎日背負って通学することにより、体に不調が現れたり、精神面に影響が出たりする状態を指します。
この言葉は、2021年に、子どもの身体や発育を研究している大学教授と整形外科医によって提唱されたもので、子どもの心身に起きる現象をわかりやすく表現するために命名したとされています。
「ランドセル症候群」という名前から、「ランドセル自体の重さ」が注目されがちですが、実際は中に入れる教科書やノート、タブレット、副教材、体操服、水筒、日傘など、日々の荷物の総量が大きな負担になっています。
ランドセル症候群が起こるメカニズム
では、なぜ「ランドセル症候群」が起こるのでしょうか。
最大の要因は、子どもたちの身体がまだ成長途中であるという点です。筋肉や骨格が未発達な小学生にとって、重い荷物を毎日背負うことは、大人以上に身体的な負担となります。
特に問題となるのが、重いランドセルを背負ったときの姿勢です。
重さで後ろに引っ張られるため、自然と頭を前に倒す前傾姿勢となり、猫背になります。
背骨が前に曲がってしまう猫背だけではなく、横に曲がる「側弯(そくわん)」になると肩こりや背中、腰の痛みなどにつながるケースもあります。
では、実際の荷物の重量はどれくらいなのでしょうか。
近年子どもたちが持ち運ぶ荷物の量は増加しています。
「ランドセル工業会」のサイトによりますと、小学生が持ち運ぶ荷物の平均重量は4.7キロ(ランドセルを除く)。
小学1年生では3.6キロ。小学1年生の平均体重は約16キロなので、体重の約2割の重さの荷物を運ぶことになります。
体重50キロの大人で換算すると約10キロ。2リットルのペットボトルを5本運ぶことを想像するとかなりの負担ですよね。
筋肉や骨格が未発達の子どもにとってその負担はより大きくなります。

ランドセル症候群の主な症状
ランドセル症候群には、大きく分けて「身体的な症状」と「精神的な症状」があります。それぞれの症状を見ていきましょう。
身体的な症状
- 肩こり
ランドセルは重い荷物を2本の肩ベルトで支えます。肩に重さが集中するため、子どもでも肩こりを感じることがあります。特に肩ベルトが細い、柔軟性がない場合は負担が大きくなります。 - 背中・腰の痛み
重い荷物を背負ってバランスを取ろうと無理な姿勢を続けた結果、背中や腰に慢性的な痛みが出ることがあります。 - 姿勢の悪化(猫背・反り腰)
姿勢の崩れが固定化してしまい、自然に正しい姿勢が取れなくなることもあります。 - 側弯症のリスク
背骨が左右に湾曲する「側弯症」に発展するケースもあります。症状が進行すると見た目にも影響が出るため、早めの対応が求められます。
精神的・学習面での影響
- 通学意欲の低下
重いランドセルを毎日背負うことが子どもにとって負担となり「学校へ行くのが憂鬱」と感じるようになります。 - 集中力の低下
肩こりなどの身体の不調があると、授業に集中できなくなったり、勉強への意欲の低下につながることもあります。 - 気分の落ち込み
心身の不調が続くことで、気分が塞ぎ込みがちになり、学校生活全体にネガティブな影響を与えることもあります。

ランドセル症候群のセルフチェック方法
深刻な症状を引き起こす可能性のあるランドセル症候群ですが、ご家庭で対策することも可能です。
ここでは、ランドセル症候群を予防・改善するためのセルフチェック方法をご紹介します。
ランドセルの重さチェック
ランドセル症候群を予防・改善するためには、まずお子様が日頃背負っている「荷物の重さを」を把握することが大切です。以下の手順で簡単に測定できますのでぜひチェックしてみてください。
- お子様だけの体重を測る
- ランドセルを背負った状態で再度体重を測る
- 「2-1」でランドセル+荷物の重さがわかります
小学校低学年の場合、背負う荷物の重さは2.5キロ以下が望ましいとされています。
子どもの姿勢や歩き方の観察のポイント
荷物の重さがわかったら、ランドセルを背負ったときの姿勢や歩き方も注意してチェックしてみましょう。チェックポイントは次の4つです。

- ランドセルの上部が肩と同じ高さにあるか
- 肩ベルトが長すぎて重心が下がっていないが
- 歩く時に前かがみになっていないか
- ランドセルが左右どちらかに傾いていないか
姿勢が気になる場合は、整形外科医など専門家に相談するのも一つの方法です。
ランドセル症候群の効果的な解決策
お子様の心身に深刻な問題を及ぼしかねないランドセル症候群。
その解決策は大きく3つあります。
それは「お子様に合ったランドセルを選ぶこと」「荷物を軽量化すること」「ランドセルを正しく背負うこと」です。
では、順に見ていきましょう。
適切なランドセル選びのポイント
ランドセル症候群にならないためには、お子様の身体に合ったランドセルを選ぶことが大切です。
ランドセル選びのポイントを下記にまとめました。
- 「立ち上がり背カン」などで、肩への負担が少ない工夫がされているか。
「背カン」と呼ばれる肩ベルトの根本の部品が立ち上がっている構造のランドセルは、お子様への肩への負担が少なくなります。 - ランドセルが背中にフィットするか。
肩ベルトを適切な長さに調整することでランドセルがお子様の背中にフィットし、背中全体で重さを分散することができます。ただし、ぴったり密着しすぎると窮屈に感じたり、汗をかいたときに蒸れを感じることもありますので、ランドセルを背負ったとき、大人の手のひらが入るくらいの隙間があるとよいでしょう。 - 軽量な素材のランドセルを選ぶ
ランドセルは素材によって重さが異なります。一般的に人工皮革→牛革→コードバンの順で重さが増していきますので、より計量なランドセルを望まれる場合は人工皮革のランドセルを選ばれると良いでしょう。
鞄工房山本のランドセルは、すべての商品で「立ち上がり背カン」を採用。お子様が荷物を重く感じにくい、身体に配慮した機能設計をしています。
また素材も「人工皮革」や、従来の人工皮革よりさらに軽量の「軽量人工皮革」もご用意しています。
「重いのでは?」と思われがちな牛革・コードバンの天然皮革のランドセルにおいても、2026年ご入学向けモデルから軽量化に成功しました。
荷物の軽量化と整理術
身体に合ったランドセルを選んでも入れる荷物が重ければ意味がありませんよね。
以下の工夫で荷物を減らすことができますので参考にしてみてくださいね。
- 不要な教科書や文房具をランドセル入れっぱなしにしない
- 家で使うものと学校で使うものを分ける
正しい背負い方と姿勢指導
ランドセルは背負い方によって身体への負担を軽減させることができます。
お子様が背負ったときに、保護者様が下記のポイントをチェックされるとよいでしょう。
- ランドセルの上部とお子様の肩が同じ高さになるように肩ベルトを調整
- 手のひらが入る程度の隙間を空けて背中にフィットさせる
- 肩ベルトの長さを左右均等にし、重心が中心にくるようにする
親御様が日々「姿勢チェック」を行い、使用中の正しい姿勢を褒めてあげることで、自然と身体の使い方も良くなっていくことでしょう。

置き勉の効果と導入状況
荷物を少なくするために効果的なのは「置き勉」です。
以前は「置き勉禁止」の学校も多かったのですが、近年は子どもへの身体的影響を考慮して置き勉を容認する学校も増えているとのこと。
しかし、置き勉が認められていても「家庭学習のため」や「なんとなく持ち帰る」という子どもも多いそうです。
宿題に使う教科書は持ち帰る必要がありますが、不要なものは学校に置いて帰るよう保護者の方からお子様へのアドバイスがあるとよいかもしれません。

まとめ
ランドセル症候群は身体への影響だけでなく、心の状態や学習にも影響を及ぼす可能性があり、親御様にとっては看過できない問題だと思います。
ですが、適切なランドセル選び、荷物の整理、背負い方の見直しによって多くは改善・予防することができます。
お子様が元気に、楽しく学校生活を送るためにも、日々のちょっとした観察と工夫を取り入れてみてはいかがでしょうか。親子で一緒にしっかりとした対策を進めることが、お子様にとっても安心につながることでしょう。
鞄工房山本の店舗では、ランドセル症候群のご不安なお気持ちを少しでも解消できるよう、正しいランドセルの背負い方などをご案内させていただきます。
ぜひお気軽にスタッフにお声がけくださいませ。
