鞄工房山本版 奈良ガイド 『神奈月』 ~「本薬師寺のホテイアオイ」~

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奈良県橿原市の本薬師寺跡。10月初旬のある日、ウォーキングツアーの一団が訪れる。寺としての建物は何一つ無い。発掘された柱等があるだけで、1.4ヘクタールに及ぶ休耕田を活用した布袋葵(ホテイアオイ)が咲き誇る。 七福神のひとつ、布袋のふくよかな腹に似た浮き袋を持つこの水草。満開を迎えたその姿を見に来たようだ。 本薬師寺は、天武天皇が皇后、後の持統天皇の病気回復祈願の為に建てた寺で、11世紀まで残っていたとされるほど、歴史のある史跡。 地域住民と小学校、そして撮影に来る人たちとの協力によりホテイアオイが育てられている。 布袋といえば金運、富や幸福をもたらす神として知られている。そんなゆかりがあり、その力にあやかりたい、という気持ちからなのだろうか。可憐な紫の花を付けたホテイアオイを見に来る人がこの時期は絶えない。 地域の人たちによって守られている布袋葵の群生地。

地域の人たちによって守られている布袋葵の群生地。

寺としての建物はなくとも、人々を惹き付けるのは、緑の葉、紫の中に黄色がアクセントとなった花の美しさ、そしてそれを育てる人たちの気持ちによるものであろう。鞄工房山本のランドセルも同じように長い間飽きのこないデザインと、つくる人たちの気持ちの込められたものだ。だからこそ、愛着を持ってもらえる逸品となる。ランドセルも、ホテイアオイも、周りの自然も、子どもたちを布袋様のように微笑みながら見守っている。それは作り手や親の気持ちを投影しているかのようにだ。 その日の夕方。美しい夕日とホテイアオイ。子どもたちが家へと帰る時間だろう。みんなのおかげで、何事も無い一日であった、と言えれば良い。そんな感謝をしたくなる風景であった。

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