肩ベルトというものは、子どもとランドセルとの距離を決める重要なものだ。背カンというランドセル上部でベルトとをつなぐ金具。時代とともに技術の進化も見て取れる。
子どもの成長は早い。それに、激しく動く。そんな子どもたちにあわせて鞄工房山本が金具をメーカーと共に作り上げていった。
ベルト金具の形状が違うのは、左右への可動域の有無によるもの。もちろん、左がより新しい。
昔は左右への調整機能をつけたとしても6年間の耐久性を保つことが無理であった。そして、ベルトの長さを調整しても背中との距離があきやすい傾向があった。なぜならランドセルを背負った時に下がった位置に来てしまう為だった。
それが、左右に動くようになることで体格、特に肩幅の成長という変化に対応できるようになった。また、子どもの動きにもあわせてランドセルも動くので、けがの可能性や体への負担がより低減されたのだ。
そして、背カンの取り付け位置も10年ほど前からより上になった。
「より上に背カンがついたことで肩ベルトが立ち上がって、ランドセルが背中によりフィットするようになりました」と、工房主。
ベルトが付いた金具の位置が上へ移動しているのがより新しいモデルである。
ランドセル自体が背中のより上の位置に持ち上げられ、肩甲骨の上の位置に背中のパッド上部がつくことで、ランドセルの下部は腰の位置にしっかりとくるようになる訳だ。だから背中のパッドの形状も変化している。
くぼんだ部分が少なくパッドが厚い昔のランドセルは、腰のくびれた部分にあたる面積が多いのが理由。子どもたちや親御さんの意見を取り入れた例としてもうひとつ挙げられるのが、背カンに付いたループ形状のフック。上部に付くことでフックが頭や首に当たってけがの原因となりかねない。それを格納式のものに変えることで安心と安全へとつなげていったのだ。