コストをかけてでも手作業でランドセルをつくる理由 〜 工房主・山本一彦の想い

山本一家のランドセル物語

心意気 ランドセルにかける想い

ランドセルは、子どもが6歳で初めて手にする高価なものかも知れません。ランドセルは、ただ教材を運搬する道具ではなく、6年間を見守る大事なパートナーだという考えがあるため、大量生産では伝えきれないと思い、1つ1つ手づくりするのが鞄工房山本の信念の1つです。 ランドセルづくりの中で、山本が特に気合いを入れるのが「型入れ」です。 大きな1枚の革を広げ、型入れをする瞬間はランドセルづくりのはじまりでもあります。 革のために牛を殺すのではなく、食用として加工されたあとにでる副産物が「皮」なのです。その皮を製品として使えるために加工したものが「革」と呼ばれます。生き物を無駄にせず、その恩恵に感謝しながら頂く思いです。そのため、ランドセルづくりの際も無駄のないように、どう使い切るか、その勝負が型入れでもあります。 牛の革は、背中側の繊維は緻密で強く、お腹側の繊維は荒くて柔らかいという特徴があります。また、牛の繊維は背中からお腹に向 かっているので、型入れの際には繊維の向きにも気を遣います。 繊維の強い背中側から、お腹側に向かって「かぶせ」の型をとります。肩ベルトも背中側からお腹側に裁断します。決して横の向きでは裁断しません。他のメーカーさんがここまでこだわった型入れの仕方をしているかどうかはわかりません。コストを考えると中々できないやり方だからです。 しかし、鞄工房山本は、最高の革で最大限に素材を活かしたランドセルづくりをしていますので、革から型の取り方1つとっても、繊維の特徴を活かしています。 牛1頭から2枚の大きな革ができ、そこから約6個のランドセルができあがります。 無駄なく、最高のランドセルづくりに命がけです。 この型入れは、工房見学に来ていただくと実際に見られますので、ぜひ直接確かめてみてくださいね! thought_pct_photo

伝えたい想い

モノを大事にする気持ちは、ただ教えるだけでは中々伝わらないと思います。これは、大人も子どもも同じですよね。 鞄工房山本が、本革にこだわる理由のひとつに、「モノを大事にする気持ち」を育んでほしいから、というのもあります。様々な体験を通して学ぶ子どもは、五感で理解をしているようです。 実際に、工房でランドセルがつくられている風景を見て、ランドセルが大切につくられていることを理解してくれます。あまりにもランドセルづくりの様子に釘付けで、私たちまで元気をもらってしまいます。 目で見たものを直接触れて、革の触感を確かめ、「いいもの」を五感で感じ取ってもらえるように工房では自由に見学し、スタッフに話しかけていただいています。 大人にとっては、説明を見聞きしてイメージし、価値を理解することができますが、子どもは経験が少ない分、直接の体験がもっともお子さまのココロに響きます。 奈良店では、とにかくランドセルを触って、背負っていただき、天然の革の良さを体感していただきます。 どんどん触って、どんどん感じてモノを大事にする気持ちを育んでほしい。 それが、私たちにできるランドセルへの付加価値だと考えています。

スタッフのチームワーク

鞄工房山本には若いスタッフも多いです。しかし、築き上げてきた厳しい基準があるからこそ、抜群のチームワークでお互いの経験をフォローしています。 大切なのは職歴ではなく、この工房で何をつくるか、ランドセルづくりに想いを込められるかということです。 今では、私以上に厳しいメンバーがとっても頼もしいです。簡単なものから、熟練した技術が必要なものまで、工程を1つずつきっちりこなしてほしい。スピードよりも正確さを大事にしているのが、鞄工房山本です。 チームでランドセルをつくりあげる工房で、山本が常に伝えているのは「次の工程のことを考えてやる」ということです。たった1つ、ほんの1ミリ、「まぁいいか」という気持ちがあるとランドセルは仕上がりません。 パーツをはり合わせる工程で少しでもずれたら、ミシンで縫うときにずれてしまいます。ミシンでずれたのをそのままにすると、破れやすくなってしまうため、最後のチェックで使えないものになってしまうからです。素材も、自然からいただいているものです。粗末に扱うことはできません。 頼りになるスタッフがいて、そしてこれからを期待して修行中の若手スタッフ。 鞄工房山本では、みんなそれぞれが支えあって、1つ1つ丁寧に最高品質のランドセルをつくりあげています。

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