「ともにつくるランドセル」プロジェクトの物語は、2025年春に始まりました。
3組のご家族とともに、世界にひとつのランドセルをつくっています。
▶︎ 第2話はこちら|お獅子さん、見守っててね。
今回ご紹介するのは、Iさまご家族。淡い紫が大好きな男の子 Rさんと、お母さまとの打ち合わせ風景をご紹介します。
「ともにつくるランドセル」へご応募される前、奈良本店にランドセル選びにお越しくださったIさまご家族。そのときRさんが選んだのは、「ユニ パープル」のランドセルでした。
「ぼく、ユニ パープルがいい!」

Rさんが最初に「これがいい!」と選んでくださったのは、鞄工房山本の「ユニ パープル」。
そのお気持ちは、打ち合わせ当日までずっと変わりませんでした。
「普段から、淡くてやさしい色が好きみたいで」とお母さま。
打ち合わせでは、Rさんのその“好き”を起点にして、ランドセル全体の色の組み合わせを考えていきました。
好きを応援したい。だからこそ、悩んでしまう。

実はRさんのお母さまの姪御さん——Rさんにとってのいとこのお姉さんたちも、鞄工房山本のランドセルを使ってくださっており、ご家族のなかで「Rさんも鞄工房山本のランドセルを」とお考えくださっていたそうです。
けれどその日、ランドセルのご購入には至りませんでした。
お母さまの中に、「本当にこれでいいのかな……」という、少しだけ立ち止まる気持ちがあったからです。
それは、Rさんの“好き”を否定したいという気持ちではありません。むしろ、「好きな色を、6年間誇りをもって持ってほしい」という願いが、そこにはありました。
周りから「女の子のランドセル?」と思われたらどうしよう、将来、本人が「どうして止めてくれなかったの」と感じることがあったら——そんな未来のことまで考えて、大切に悩んでくださっていたのです。
どうすれば、その気持ちをちゃんと応援できるだろう?
そんなときに「ともにつくるランドセル」プロジェクトのことを知り、「Rさんのためのランドセルを、一緒につくってもらえるなら」と思い、ご応募くださいました。

鞄工房山本としても、その想いをしっかり受けとめながら、Rさんの“好き”と、お母さまのやさしいまなざし、その両方をかたちにできるようなランドセルを、いま職人たちとともに考えはじめています。
Rさんは、普段から淡い紫色が大好き。保育園での制作物でも、紫色やラベンダーの素材を自然と選ぶことが多いそうです。

ご家族からいただいた写真にも、色選びへのこだわりと“好き”の気持ちがしっかりと表れていて、感性の豊かさが伝わってきます。
Rさんの“好き”から生まれる配色

打ち合わせでは、革やファスナー、糸のサンプルを実際に見て触れながら、組み合わせを考えていただきました。
なかでも「これがいいかも」とじっくり見つめてくださったのが、ユニ パープルと同じ上品な薄い紫と落ち着いたスモーキーラベンダーの組み合わせ。
「この色、好き?」とやさしく問いかけるお母さまのまなざしが、とても印象的でした。
「自分で選んだランドセルだから」

Rさんが選んだパープルのランドセルは、今、少しずつかたちになろうとしています。自分で選んで、自分の“好き”を大切にして、つくっていくランドセル。
6年間をともに歩む“はじめての一生もの”が、Rさんにとって、そしてIさまご家族にとって、誇らしい相棒となりますように。
どんな色が好きか、どんなランドセルがその子らしいのか。
その答えは、性別ではなく、その子の“好き”の中にある——そう、私たちは改めて感じています。

つづく、もうひとつのストーリーへ
「ともにつくるランドセル」プロジェクトは、3組のご家族とともに進んでいます。
次回はいよいよ最後のご家族のストーリーをご紹介します。どうぞ楽しみにお待ちください。