最高級皮革コードバン
―コードバン製造の馬革タンナー 姫路・新喜皮革さんを訪ねて―

山本(左)、専務(中央)、新田社長(写真・右)
コードバンを原皮から製品革に仕上げるタンナー(皮革製造業)は、日本の(有)新喜皮革とアメリカのホーウィン社で、世界でも二社しかないそうです。
世界遺産・姫路城のほど近くにある(有)新喜皮革さんは、1951年創業、馬革のみを扱うタンナーで、その原皮はヨーロッパ(主にフランスで、イタリア、ポーランドからも)から買い付けています。
月約3500頭のコードバンを製造されていますが、その中には、有名メーカーの靴用のコードバンもあります。革の本場のヨーロッパから原皮を輸入し、製品革にして、ヨーロッパの有名なメーカーに供給するという高い技術のもと、とても良い風合いの素仕上げのコードバンや、斬新な発想からワニの型押しをしたコードバン等、新製品の開発にも取り組んでおられます。ご長男の専務は高校の時に家業を継ぐことを決め、大学卒業後、日本に比べて革の歴史が長い欧米のフランスに渡り、革の勉強をされたそうです。
コードバンとは

コードバンとは、緻密な繊維構造を持つ馬のお尻の部分から、左右一枚ずつしか取れない大変貴重な皮革で、とても美しい光沢と、耐衝撃性(傷のつきにくさ)の面において牛革の3〜4倍の強度を持つ革製品の最高級素材です。
革のランドセルには、牛革製と、かぶせにコードバンを使用したものがあります。コードバンの大きさは馬によって違い、全ての馬からランドセルのかぶせの大きさのコードバンは取れません。現在、ランドセルの8割以上が人工皮革製品で、革製品は10数パーセントとみられています。ランドセル以外には、靴やベルト、革小物も高級品として位置付けされています。
革の起源
人間が“かわ”を身にまとったり、住居の敷物に使ったりするようになったのは、 いつ頃からだと思われますか。? それは、人類が地球上に誕生し、動物の肉を食べるようになった頃からだと 考えられるでしょう。 狩猟で獲物をとらえ、肉を食べ、残った皮をたき火のそばに置いていたのが、 自然に燻されて腐らなくなったり、 肉といっしょに皮も噛んでいるうちに繊維がほぐれて、 なめされたような状態になり乾いても固くならず、動物から食肉をとった後の 皮を副産物として利用するようになったと考えられます。 動物の体表を覆う生の状態の「皮」から、毛を取り除き、 腐らないようになめした状態のもの、すなわち化学変化させたものを「革」といいます。
“皮”から“革”へ 〜コードバンができるまで〜
原皮は毛が付いたまま腐敗防止のため塩漬けにされます。折りたたんだ状態でヨーロッパからコンテナ船で運ばれ、神戸港に入港します。

お尻(コードバン部分)を裁った原皮。入荷された原皮は、コードバンとなるお尻の
部分を裁ち、すぐに製造工程には入らず、
約2ヶ月間、積み重ねて低温倉庫で寝かせます。このように、広げた状態で2ヶ月間寝かせることが
製品革の仕上がりに大きく影響してきます。
2ヵ月間寝かせた後、巨大な「ドラム」に塩漬けされた原皮をいれ、水と共に回転させます。塩が抜け、皮に潤いが戻り、生皮の状態に戻ります。工場内には、水戻し、加脂、染色等、製造工程でかかせない巨大な樽状のドラムがいくつもあります。
“なめす”という工程は、皮を化学変化させて革にすることです。薬品で毛と付着している脂肪やたんぱく質を取り除いた後、植物タンニン槽に1ヶ月間浸け込みます。新喜皮革さんには28のタンニン槽があり、
365日休むことなくひとつの槽で約100枚のお尻(コードバンになる部分)の原皮がなめされます。
天井一面に吊るされたコードバン。
なめした革は、大きな窓を開けると、とても風通しの良い屋内で自然乾燥させます。
自然乾燥させるための大きな窓を開けると、心地よい風が入ってきて、その窓からは風光明媚な景色の中、遠く姫路城も見えます。
自然乾燥室に所狭しと積まれたコードバン。
厚みを揃え、染色・塗装していくのですが、
原皮で入荷され、靴やベルト、革小物用の
製品革に仕上がるまで、実に5ヶ月を要します。
(ランドセル用のコードバンは、仕上げ方法が違う為、他社で製造・仕上げされ、私達ランドセルメーカーに入荷されます)


大きな面積のランドセル用と、長いベルト用は、この金枠で測って振り分けます。
原皮の状態では、コードバンの大きさは全くわからず、
なめしの工程が進んでいくにつれコードバンの形が次第に表れてきます。

牛革の焼印は牛の所有者の印(しるし)として押され、私としては、型入れ・
裁断をする時に目につき、当たり前なのですが、コードバンに焼印が入っているのを初めて見ました。
大きな面積を必要とするランドセル用には、焼印のある部分は入れないようにしているそうです。
しかし、馬も牛と同じくお尻に所有者の焼印が入っているのは当然で当たり前なのでした。
当工房に入荷されたランドセルのかぶせ用
コードバンは、馬のお尻の形そのまま。

コードバン以外の部分を避け、良質な部分を選び型入れをします。
(※この革全てがコードバンではありません)

毛の付いた馬革(フロント部分)
普通、毛は薬品で抜くのですが、この革は、毛を残したまま、
なめしの工程に入り、 製品革に仕上げられました。
触ると滑らかで、とても肌触りが良かったです。
今回おじゃまして感じたことは、社長はじめ10数名の社員の皆さんが、革の最高級品を造っているという誇りを持っておられるということ。そんな熱意を感じる工場でした。これは、初めて宮内産業(株)さんの工場を見学させていただいた時に受けた印象と同じです。
宮内産業(株)さんはランドセル用のコードバンや牛革以外に、センチュリーやセルシオ等、高級車のカーシートやステアリング(車関連が主力で、製造量の70パーセントを占めます)。また、飛騨民芸家具の椅子張り用革等、高級な革を造っているというプライドが伝わってきた事を思い出しました。高い技術に加え、良質な材料の供給を受け、はじめて良い製品が生まれるのです。
鞄を造ることも、革を造ることも“もの造り”は長い歴史の中で、改良に改良を重ね、より良い製品を世に送り出してきましたが、その先人達の知恵と努力には、尊敬の念を抱き、感謝し、また私達も今以上のもの造りに励んでいかなければいけないと思っています。